【2026年版】退職金の不支給規定とは?
社労士が徹底解説する背任行為発覚時の実務対応と法的判断ポイント
問題社員の退職や、横領などの背任行為が発覚した際の対応について、どのように進めればよいか悩んでいる経営者や人事労務担当者は少なくありません。
労働法制の厳格化や判例の蓄積が進む中で、従来通りの感情的な対応や慣例に基づいた処理では、意図せず企業側が多大な労務リスク(訴訟リスク)を抱え込むケースが増加しています。
結論から言うと、この難易度の高い課題を根本から解決し、企業を守るためには「退職金の法的性質に対する深い理解と、就業規則(退職金規程)の適正化」が不可欠です。
2026年現在の最新の法的基準や裁判実務において、企業側に求められる「不支給や減額とするための合理的な根拠の立証」のハードルは、かつてなく厳格化されているためです。
本記事では、実務の最前線を知る社会保険労務士の視点から、退職金不支給に関する最新の法的根拠と、万が一の事態に備えた「明日から使える運用フロー」を論理的かつ分かりやすく解説します。
読者が抱える漠然とした懸念を払拭し、自信を持って適正な組織運営に取り組めるよう、実務に即した具体的なノウハウを深掘りして紹介します。
【目次】
第1章:なぜ今、企業で「退職金の不支給・減額規定の適正化」が重要視されるのか?
第2章:【2026年最新】「退職金の法的性質」に関する判例動向と解釈
第3章:実務への影響を深掘り:企業が直面する3つの経営課題とメリット
第4章:企業がとるべき具体的な実務対応(3つのステップ)
第5章:専門家が指摘する「同業他社への転職」の落とし穴とグレーゾーン
第6章:実務担当者が直面する7つの疑問(Q&A)
まとめ:退職金不支給は「規程の柔軟な整備と客観的証拠の保全」が企業の未来を創る
第1章:なぜ今、企業で「退職金の不支給・減額規定の適正化」が重要視されるのか?
従業員による重大な規律違反が発覚した際、「こんな社員に退職金など払えない」と考えるのは経営者として自然な感情かもしれません。
しかし、十分な検討を行わずに退職金の不支給や大幅な減額を安易に決定することは、直ちに企業の経営リスクへと直結します。
なぜなら、単なる「けしからん」という感情論での不支給決定は、現在の労働裁判において高確率で覆される傾向にあるからです。
近年、コンプライアンス意識の高まりや労働者の権利意識の向上により、企業に対する法的な監視の目は極めて厳しくなっています。
かつて、日本の企業社会においては「懲戒解雇を受けた者=退職金はゼロで当然」という暗黙の了解が広く存在していました。
しかし、現在における司法の判断基準では、この常識は全く通用しません。
具体的には、業務上横領などの明らかな背任行為であっても、「過去の長年にわたる誠実な勤務による功労を、今回のたった一度の非違行為によって『完全に抹消する』ほどのものではない」と判断され、会社側に対して退職金の一部(または半額以上)の支払いが命じられる事例が急増しています。
つまり、「懲戒解雇の有効性」と「退職金の全額不支給の有効性」は、全く別の基準で審査される時代となっているのです。
さらに、現代のデジタル社会においては、不適切な退職金トラブルは企業の口コミサイトやSNSを通じて瞬時に拡散されます。
「正当な理由なく退職金を出し渋るブラック企業」というレッテルを貼られれば、既存社員の離職(静かなる退職)を招くだけでなく、今後の採用活動において致命的なコスト増大を引き起こします。
だからこそ、経営層が率先して退職金の法的性質の最新基準をアップデートし、適切な対策を講じることが強く求められているのです。
自社の規程を最新の実務に適合するよう見直すことは、万が一のトラブルの際に企業資産とブランドを守るための「保険」として機能します。

第2章:【2026年最新】「退職金の法的性質」に関する判例動向と解釈
トラブル発生時に自社の正当性を証明し、リスクを最小限に抑えるためには、2026年現在の「最新の判例法理に基づいた客観的証拠」がすべてとなります。
労働基準法第89条では、退職金の定めをする場合は適用される労働者の範囲、決定、計算・支払いの方法等を就業規則に記載しなければならない(絶対的必要記載事項)と定めています。
規定された退職金は明確に「労働基準法上の賃金」に該当し、賃金全額払いの原則が適用されるため、これを例外的に不支給とするには極めて厳格な要件が求められます。
退職金の法的性質の基本解釈(2つの側面)
裁判所は、退職金について以下の2つの性質を併せ持つものと解釈しています。
- 功労報償的性格:長年会社のために尽くしてくれたことに対する慰労や報奨
- 賃金後払い的性格:在職中の毎月の給与を少しずつ積み立て、退職時にまとめて支払うもの
退職金を「全額不支給」とするためには、単に懲戒解雇事由に該当するだけでなく、これら「それまでの長年の誠実な勤務実態(功労)」を「完全に抹消してしまうほどの、強度の背信性」が労働者側にあったと、会社側が確たる証拠をもって立証(立証責任)しなければなりません。
近年の労働裁判の判断基準と重要判例
過去の認識では、就業規則に「懲戒解雇された者には退職金を支給しない」と記載されていれば、機械的に全額不支給として処理することが法的にも許容されやすい環境でした。
しかし2026年現在、裁判所は非違行為の重大性と過去の功労の度合いを厳密に天秤にかけます。
この基準を示した過去の重要判例として「小田急電鉄事件」がよく知られています。
この事件では、痴漢行為により有罪判決を受けた社員に対する懲戒解雇は有効とされたものの、退職金の全額不支給については「過去の長年の功労を完全に抹消するほどの背信性はない」として、会社側に退職金の3割の支払いが命じられました。
退職金が「全額不支給」として認められるのは、長年にわたる計画的かつ巧妙な横領で被害額が甚大であるケースや、会社の存立を脅かすような重大な機密漏洩など、「それまでの勤続の功労が全くの無価値になるほど、会社に決定的な損害を与えた場合」に限られます。
会社側が「論理的・客観的」に著しい背信性を証明できる明確な運用体制と証拠がない限り、全額不支給の主張は退けられる可能性が高いのです。
実務においては、「全額不支給が認められるケースは極めて稀である」という前提に立ち、規程の改定や事実調査を進める必要があります。

第3章:実務への影響を深掘り:企業が直面する3つの経営課題とメリット
判例の趣旨を深く理解せず、ただ形式的に「規程にあるから」と全額不支給を強行することは極めて危険です。
実質的な要件を満たすよう前向きに取り組むことで、企業は以下の「3つの領域」において大きなメリット(リスク回避)を享受できます。
・法的・財務的領域の安定化
全額不支給の決定が裁判で無効(一部支払い命令)とされた場合、退職金本額の支払いに加え、賃金の支払の確保等に関する法律(賃確法)等に基づき、退職日の翌日から「年率14.6%」という非常に高額な遅延損害金が付加されるリスクがあります。
労働審判や通常訴訟が1年から3年と長期化すれば、遅延損害金と弁護士費用だけで当初の支払額を大きく上回る甚大な財務ダメージが発生します。
さらに、経営陣が裁判対応に追われる「見えない時間的コスト」も計り知れません。
適法な基準で減額の落としどころを探ることは、無用な財務リスクを排除し、安定した経営基盤を維持することと同義です。
・組織文化と従業員エンゲージメントの維持
一部の問題社員に対する処遇であっても、規程の恣意的な運用や感情的な処分は、他の従業員に不公平感や不安を与えます。
「会社は理由をつけて退職金を払わないのではないか」という不信感は、職場全体のモチベーション低下を引き起こし、連鎖退職の引き金となり得ます。
適正な手続きを経て客観的な処分を行う姿勢を示すことは、真面目に働く多くの従業員に対して「この会社は公平で安全である」という安心感を与え、組織の連帯感を高めることに繋がります。
・企業ブランドと採用市場での競争力維持
不適切な労務対応がSNS等で拡散すれば、企業ブランドは瞬時に毀損し、将来的な採用活動に致命的な悪影響を及ぼします。
一度「不当な手段で退職金を出し渋るブラック企業」という烙印を押されると、採用市場からの退場を意味しかねません。
法令を遵守し、事案ごとに誠実かつ合理的な対応をとることは、クリーンな企業イメージを守るための最強の防衛策となります。
したがって、退職金の不支給・減額規定の適正運用は、単なるトラブル対応としてではなく、企業の存続を左右する重要な経営課題として全社的に取り組むことが推奨されます。

第4章:企業がとるべき具体的な実務対応(3つのステップ)
労務トラブルによるリスクを最小化し、健全な組織を保つためには、以下の3つのステップを順番に、そして確実に実行していくことが最も近道です。
ステップ1:現状の把握と退職金規程のアップデート
まずは、自社の退職金規程の「不支給・減額事由」が、最新の判例基準に適合する形で明記されているかを詳細に確認します。
具体的な規定の改定例としては、以下のような条文が推奨されます。
- 【改定前】
「従業員が懲戒解雇された場合、退職金は支給しない。」 - 【改定後】
「従業員が懲戒解雇に処せられた場合、または退職後に懲戒解雇に相当する事由が発覚した場合は、退職金の全部または一部を支給しないことができる。
ただし、その非違行為の性質、情状、過去の勤務態度等を総合的に勘案して、不支給または減額の程度を決定するものとする。」
さらに、返還請求に関する条文として「退職金の支払い後に、在職中の重大な非違行為が発覚した場合、会社はすでに支給した退職金の全部または一部の返還を求めることができる」という規定を設けます。
このように「事情を考慮して割合を決める(裁量の余地を残す)」規程にしておくことで、一部支給の決定が「規程違反」にならず、会社としての柔軟な対応が可能になります。
ステップ2:書式の整備と事実調査(証拠化)の徹底
次に、「言った・言わない」のトラブルを防ぎ、非違行為の「背信性」を立証するため、すべてのプロセスを適切な書面やデータとして記録する体制を整えます。
- 横領などの事実調査を行う際は、客観的な証拠(会計データ、メールの履歴、防犯カメラの映像など)を確実に保全します。
- 調査報告書や本人との面談記録簿には、「実施日時」「被害額や手口の悪質性などの具体的事実」「本人の弁明内容」「本人の署名(または確認)」を残す運用を徹底してください。
ステップ3:適正な手続きの履行(処分委員会の開催と対話)
実際の対象社員への対応においては、経営者の主観や感情を完全に排し、以下のフローで客観的に進行します。
実務上は、特定の個人の裁量ではなく「懲罰委員会」などの客観的な機関を設置し、そこで協議した記録(議事録)を残すことが極めて有効です。
- 事実の共有:保全した客観的なデータのみを提示し、事実関係を確認します。
- 弁明の機会の付与:処分を決定する前に、必ず本人の言い分(弁明)を傾聴し、記録します。
口頭だけでなく、書面で「〇月〇日までに弁明書を提出すること」と通知し、期限内に提出されなければ弁明を放棄したとみなす運用が安全です。
これは「適正手続(デュープロセス)」を担保し、処分の有効性を高めるための最重要事項です。
裁判所は、この弁明の機会が与えられなかった処分を手続的瑕疵として厳しく無効と判断する傾向があります。 - 処分の決定:過去の判例動向や自社の処分基準、非違行為の重大性、本人の過去の功労などを総合的に勘案し、妥当な減額幅(全額不支給か、半額か、3割減かなど)を決定します。
十分な調査や弁明の機会を与えず、いきなり全額不支給を通告することは、裁判において会社側の致命傷となります。

第5章:専門家が指摘する「同業他社への転職」の落とし穴とグレーゾーン
実務において人事担当者が戸惑いやすく、法的リスクが非常に高いのが、「退職した従業員が同業他社へ転職したこと(競業避止義務違反)」を理由として、退職金を全額不支給または大幅減額とするケースです。
職業選択の自由との衝突と「6つの判断要素」
憲法では「職業選択の自由」が保障されており、従業員が退職後にどこへ再就職するかは原則として本人の自由です。
競業避止義務違反による退職金の不支給や減額を裁判で有効と認めさせるためには、会社側が「競業避止義務を課す合理性」を客観的に立証する必要があります。
裁判所は主に以下の6つの要素で有効性を判断します。
① 会社の守るべき正当な利益(独自の技術や営業秘密)があるか
② 従業員の地位(役員や重要なポストにいたか)
③ 制限の地域(範囲が合理的に限定されているか)
④ 制限の期間(1年から2年程度が上限とされることが多い)
⑤ 禁止される行為の範囲(単なる転職か、積極的な引き抜きか)
⑥ 代償措置の有無(最も重要視される要素)
特に①の「正当な利益」については、不正競争防止法上の「営業秘密」の要件である「秘密管理性(パスワード等で守られているか)」「有用性(事業活動に有用か)」「非公知性(世間に知られていないか)」の3要件を満たすような重要な情報でなければ、法的保護の対象となりにくい点に注意が必要です。
単なる一般的な顧客リストを持ち出した程度では、会社に決定的な損害を与えたとは見なされにくいのが現実です。
また、⑥の「代償措置」も重要です。在職中の給与に機密保持手当が含まれていたか、あるいは退職時に十分な割増退職金を支払っていたかなど、転職の自由を制限するに見合った「見返り」がなければ、競業避止義務の特約自体が無効と判断されます。
これらの重要情報の持ち出しや、取締役等の善管注意義務違反に該当するような悪質なケースでない限り、単に「ライバル会社に転職した」という理由だけで退職金を減額することは、不法行為として損害賠償を逆請求されるリスクすらあります。
不安を抱きながら安易な処分を下すよりも、在職中から秘密保持契約(NDA)を適切に結ぶなどの予防策にエネルギーを注ぐことが、結果として企業を守る最善の策となります。

第6章:実務担当者が直面する7つの疑問(Q&A)
退職金の減額・不支給に関する運用を実際に進めるにあたり、現場の担当者からよく寄せられる7つの疑問について、実践的な観点から回答します。
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従業員による金銭の横領が発覚し、懲戒解雇とする場合でも、退職金を支払う必要が生じるのでしょうか?
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横領の事実は許されるものではありませんが、その規模や過去の勤続年数を総合的に勘案した結果、退職金の一部支払いが必要と判断されるケースは十分にあり得ます。
この際、会社が受けた横領の被害額(損害賠償請求権)と、支払うべき退職金を相殺して清算したいと考えるのが一般的です。
しかし、ここでの最大の注意点が、労働基準法第24条第1項が定める「賃金全額払いの原則」です。退職金も賃金である以上、会社が一方的に損害賠償金と退職金を相殺することは法律で固く禁じられています。
過去の最高裁判例(日新製鋼事件)において、労働者本人が「自由な意思に基づいて相殺に同意した場合」に限り、例外として相殺が認められるという厳格な基準が示されています。
「横領したのだから相殺して当然」と勝手に判断することは労基法違反となります。
実務上は、事実関係を本人に認めさせた上で、「損害賠償債務と退職金債権を対等額で相殺することに同意する」旨を記載した合意書を、強要と受け取られないよう慎重に取得するプロセスが絶対に不可欠です。
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事実調査を行おうとしたところ、本人が非協力的で、ヒアリングや合意に応じない場合はどうすればよいですか?
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本人が非協力的な場合であっても、会社側は集めた客観的な証拠(会計データ、メール記録など)に基づいて粛々と手続きを進めてください。
このとき、密室で無理に自白を迫ったり、退職届を書くよう強要したりすることは、逆に「強要罪」や「不法行為」のリスクに繋がります。
弁明の機会を与えた上で本人が拒否したという事実を記録に残し、まずは労働問題に強い弁護士や社会保険労務士などの専門家を交えた次のステップ(法的な対応)に移行することをおすすめします。
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これまでの社内の慣例(懲戒解雇=全額不支給)から、最新基準に合わせて「一部支給」等の運用に変える際の注意点は何ですか?
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運用の変更自体は法令遵守の観点から望ましいですが、「過去の事案との公平性」に配慮する必要があります。
なぜ今回は一部支給となるのかという「処分基準の明確化」を図り、規程に落とし込んでください。
また、ルールの変更は従業員の関心事でもあるため、2026年現在のコンプライアンス基準(判例動向)に合わせて見直しを行った旨を、全従業員に丁寧に周知・説明する手続きを行ってください。
透明性の確保が、組織の安定に繋がります。
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労働裁判を戦うための訴訟費用や人事リソースが限られている中小企業は、実務上どう対応すべきでしょうか?
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「全額不支給」を強行して労働審判や裁判に発展し、弁護士費用や遅延損害金が発生するリスクを避けるため、あらかじめ「一部減額(例えば3割減や半額)」で着地点を探り、労使間で和解交渉を行うのが現実的かつ経済的です。
最低限、事案の悪質性を示す「客観的な証拠保全」だけは必ず実施し、交渉のカードとして記録を残す体制を整えておくことが重要です。
早期解決を図ることで、経営資源を本来の事業活動に集中させることができます。
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退職金を全額支払った後に、在職中の重大な不正や競業避止義務違反が発覚した場合、返還請求は可能ですか?
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退職金規程に「退職後に非違行為が発覚した場合、退職金の返還を請求できる」旨が明記されており、かつ、その不正行為が「著しい損害(背信行為)」であることを客観的に立証できれば、法的に返還請求を行うことは可能です。
ただし、一度支払った金銭を取り戻すための不当利得返還請求等のハードル(立証責任など)は極めて高くなります。
基本的には、退職時に秘密保持に関する誓約書を取得し、引継ぎを確実に行わせるなど、原則となる事前の対応を前倒しで進めることが最も安全な対策です。
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私生活における犯罪行為(例:痴漢や交通死亡事故など)で懲戒解雇した場合、退職金はどうなりますか?
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私生活上の行為は原則として業務外の事柄であるため、それによって「企業の秩序や社会的評価に対する影響が甚大である」と客観的に認められない限り、退職金の全額不支給は極めて困難です。
例えば、会社の制服を着て犯罪を行った、あるいは報道されて会社の信用が著しく低下した、といった具体的な証拠がない限り、大幅な減額も認められにくい傾向にあります。
「懲戒解雇の有効性」と「退職金減額の妥当性」は分けて考える必要があります。
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退職金規程を明文化していない会社ですが、慣例として退職者に一定額を支払っています。不正を行った社員に対しては減額できますか?
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規程がない以上、「どのような場合に減額・不支給とするか」という法的な根拠が存在しないことになります。
長年の慣例により退職金を支払っている場合、「労使慣行」として退職金支払い義務が成立しているとみなされる可能性が高く、減額の根拠がないため全額支払いが命じられるリスクが非常に高くなります。
このような不測の事態を防ぐためにも、早急に不支給・減額事由を含めた退職金規程を明文化し、従業員に周知する手続きが必要です。

まとめ:退職金不支給は「規程の柔軟な整備と客観的証拠の保全」が企業の未来を創る
退職金の不支給や減額に関する労務課題において、最も重要な成功要因は「事前の計画的な規程の準備」と「問題発生時の初動の正確な証拠保全」にあります。
感情に任せて「全額不支給」を決定し、後から裁判等で問題がこじれてから泥縄式に対応を始めても、取り返しのつかない膨大な時間とコスト、そして社会的信用を失うだけだからです。
しかし、逆の見方をすれば、自社のルールを明確化し、適法なプロセスに基づく客観的な対応フローさえ整えてしまえば、不測の事態は決して恐れるものではありません。
複雑な課題に直面した時こそ、透明性の高いシステム運用へと舵を切る絶好のタイミングとなります。
ぜひ、本記事で解説した2026年現在の最新基準や、具体的な3つのステップを、自社の退職金規程に照らし合わせて確認してみてください。
「退職金を支給しないことがある」という柔軟な規定への変更など、すぐできる小さな見直しから着手することが大切です。
最新の判例動向に基づいた正しい知識と、客観的で誠実な運用プロセスを築くことこそが、大切な企業資産を守り、真面目に働く従業員が安心して活躍できる環境を提供するための最大の武器となるはずです。


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