【第5回】障害年金の「1級・2級・3級」は何が違う?

判定基準と「日常生活能力」の秘密を公開

「うつ病で会社を休職中ですが、これは何級になりますか?」

「人工透析を始めたら2級になると聞いたのですが…。」

障害年金の申請を考えたとき、誰もが気になるのが「自分は何級に認定されるのか?」という点です。

等級によって支給額が変わるだけでなく、3級があるのかないのか(基礎年金か厚生年金保険か)によって、受給できるかどうかの運命すら変わってきます。

しかし、この「等級」の決まり方は非常に複雑で、医師でさえ正確に把握していないことがあります。

第5回目は、障害年金の等級がどのように決まるのか、その「モノサシ(判断基準)」について、社会保険労務士が分かりやすく解説します。


目次


1⃣ 「身体障害者手帳」の等級とは全く別物です

はじめに、最も多い勘違いを正しておきましょう。

「身体障害者手帳が1級だから、年金も1級もらえるはず。」

「手帳が4級だから、年金はもらえないだろう。」

これは大きな間違いです。

第1回でも少し触れましたが、手帳の等級と年金の等級はリンクしていません。

  • 手帳: 身体の機能障害(足が動かない、目が見えない等)に重きを置く。
  • 年金: その障害によって「生活や仕事にどれだけ支障があるか」に重きを置く。

例えば、人工透析をしている場合、身体障害者手帳は「1級」になりますが、障害年金では原則「2級」となります。

逆に、うつ病などは精神障害者保健福祉手帳を持っていなくても、障害年金2級に認定されることは多々あります。

「手帳の等級=年金の等級」という思い込みは捨てて、年金独自の基準を知る必要があります。

2⃣ ざっくり掴む!1級・2級・3級のイメージ

細かい基準の前に、まずは法律が定める全体的なイメージ(目安)を掴んでおきましょう。

【1級】(基礎・厚生ともにあり)

「他人の介助がなければ、ほとんど自分の用事を済ませることができない状態」

  • イメージ: 常時ベッドの上での生活、またはそれに近い状態
  • 活動範囲: 入院中、または自宅内での活動も「寝室周辺」に限られるレベルです。

【2級】(基礎・厚生ともにあり)

「必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない状態」

  • イメージ: 家庭内での軽食作りや下着程度の洗濯はできるかもしれないが、それ以上の活動は難しい状態
  • 活動範囲: 入院中、または自宅内での活動に限られるレベルです。会社へ通勤してフルタイムで働くことは原則困難とされます。

【3級】(厚生年金のみ!)

「労働に著しい制限を受ける、または労働に著しい制限を加えることを必要とする状態」

  • イメージ: 仕事はなんとかできるが、職場の配慮が必要だったり、残業ができなかったり、休みがちだったりする状態
  • 活動範囲: 健常者と同じようなフルタイム勤務は難しいが、配慮があれば働ける、あるいは軽作業なら可能というレベルです。

非常に重要 国民年金(障害基礎年金)の方には3級がありません。

どんなに生活が苦しくても、2級の基準(日常生活が極めて困難)に達しなければ「不支給」となります。

【障害手当金】(厚生年金のみ)

3級よりも軽い障害で、症状が固定している場合に一時金として支給されます。

3⃣ どうやって決まる?「数値」で決まる病気、「生活能力」で決まる病気

では、具体的にどう判定されるのでしょうか。

病気の種類によって「モノサシ」が異なります。

A. 検査数値(スペック)で決まるもの

外部障害や一部の内部障害は、客観的な数値で基準が決まっています。

  • 眼の障害: 両眼の視力の和が0.04以下なら1級、0.08以下なら2級など
  • 聴覚の障害: 両耳の聴力レベルが100デシベル以上なら1級など
  • 腎疾患: 血清クレアチニンやeGFRの数値など

これらは、診断書の数値が基準に当てはまれば、比較的スムーズに等級が決まります(白黒はっきりしています。)

B. 「日常生活能力」で決まるもの

問題はこちらです。

精神疾患(うつ病・統合失調症・発達障害など)、がん、難病などは、数値だけで辛さを測れません。

「血液検査は正常だけど、痛みで動けない」

「IQは普通だけど、対人関係が築けない」

といったケースです。この場合、「日常生活能力(ADL)」がどれくらい低下しているかが審査されます。

4⃣ 最も分かりにくい「精神の障害」の判定ガイドライン

現在、障害年金申請の半数以上を占める精神疾患において、国は「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」というものを公表しています。

ここで重視されるのが、診断書裏面にある「日常生活能力の判定」という7つの項目です。

この7項目について、医師が4段階評価(できる〜助言や援助が必要)をつけます。

  • 適切な食事(栄養バランスを考え自発的に摂れるか?)
  • 身辺の清潔保持(入浴・洗面・着替えを自発的にできるか?)
  • 金銭管理と買い物(無駄遣いをしないか、一人で買い物に行けるか?)
  • 通院と服薬(一人で通院できるか、飲み忘れがないか?)
  • 他人との意思伝達および対人関係(職場や近所の人と円滑に会話できるか?)
  • 身辺の安全保持・危機対応(火の不始末はないか、パニック時の対応は?)
  • 社会性(銀行や役所の手続きができるか、社会のルールを守れるか?)

■ 判定のポイント

これらについて、「単身で生活すると仮定した場合」にできるかどうかで判断されます。

「親が全部やってくれるから問題が起きていない」としても、「親がいなかったらできない」のであれば、それは「できない(援助が必要)」と評価されます。

この7項目の評価平均と、全体的な障害の程度(1〜5の5段階評価)を組み合わせて、等級の目安が算出されます。

5⃣ 「働いていると2級は無理」という都市伝説の嘘とホント

「2級は働いていたらダメ」という噂をよく聞きます。

これは半分正解で、半分間違いです。

■ 身体障害・内部障害の場合

働いていても関係ありません。

透析をしていても、ペースメーカーを入れていても、数値等の要件を満たせば働きながら1級や2級を受給できます。

■ 精神障害の場合

ここが難しいところです。

精神障害の審査では、

「働けている=社会性がある=日常生活能力が高い=等級は低い(または不支給)」

と判断される傾向が強いのは事実です。

しかし、「就労=不支給」ではありません。

ガイドラインにも、「就労していることのみをもって直ちに日常生活能力が向上したと捉えない」と明記されています。

以下のような場合は、働いていても2級の可能性があります。

① 就労支援施設(A型・B型)での就労
② 障害者雇用枠での就労
③ 一般雇用だが、極めて手厚い配慮を受けている。
   ㇾ 頻繁に休憩を許されている。
   ㇾ 責任のある仕事を外されている。
   ㇾ 上司や同僚のサポートがないと業務が回らない。
   ㇾ 欠勤や遅刻・早退が多い。
④ 仕事以外の時間は寝たきりで、家事が一切できない。

「なんとか会社に行っている」のが、「健康だから」なのか、「生活のためにボロボロになりながら無理をしている」のか。

後者であることを書類できちんと証明できれば、2級の認定は十分にあり得ます。

6⃣ 医師に「元気です」と言ってはいけない理由

等級判定のカギを握るのは、やはり「医師の診断書」です。

しかし、ここで悲劇がよく起こります。

患者さんは、診察室に入ると、医師の前で無意識に「良い子」を演じてしまう(気丈に振る舞ってしまう)傾向があります。

 ・医師: 「最近どうですか?」
 ・患者: 「(本当は辛いけど、先生に心配かけたくないし…。)はい、だいぶ落ち着いています。」
 ・医師: 「そうですか、それは良かったですね。(カルテに『病状安定』と記入)」

このカルテをもとに診断書を書かれると、実際の生活はボロボロなのに、「病状は安定しており日常生活に支障なし」という、実態よりも軽い内容の診断書が出来上がってしまいます。

その結果、本来2級相当なのに不支給になる…というケースが後を絶ちません。

等級は「医師が診察室で見た姿」だけでなく、「医師が見ていない自宅での姿」も含めて判断されるべきものです。

だからこそ、医師には「家でできていないこと」「困っていること」を正直に、具体的に伝える必要があります。

7⃣ まとめ:自分の等級は「医師への伝え方」で変わる

第5回目は、複雑な等級判定の仕組みについて解説しました。

・手帳と年金の等級は別物
・1級は「ほぼ寝たきり」、2級は「家の中」、3級は「制限付き就労」が目安
・精神疾患は「7つの日常生活能力」の評価で決まる。
・働いていても、職場の配慮があれば2級の可能性はある。
・診察室での「元気なフリ」は不利益につながる。

「私の状態はもっと重いはずなのに、なぜ軽い等級なんだろう?」

もしそう感じたら、それはあなたの辛さが正しく医師に伝わっていない、あるいは診断書に反映されていない可能性があります。

障害年金は、あなたの生活の実態に合った等級で認定されるべきです。

では、どうすれば医師に正しく実態を伝え、適切な診断書を書いてもらえるのでしょうか?

次回に、その具体的なコミュニケーション方法と、申立書の書き方についてお話しします。