「けれど時間とは、生きるということ、そのものなのです。そして人のいのちは心を住み処としているのです。」
ドイツの児童文学作家であるミヒャエル・エンデの作品に「モモ」というものがあります。確かに児童文学ではありますが、侮るなかれ、この「モモ」という物語は、私たち大人にも深いメッセージを伝えてくれます。それは、「時間をどのように大切にするか」ということ。普段、何気なく過ごしていますが、この物語は私たちに「時間」に対する重要な気付きを与えてくれます。
この「モモ」という物語を簡単に説明しましょう。
物語の主人公モモは、古い円形劇場の廃墟に住む少女で、彼女には人々の話をじっくりと聞くことができる特別な能力があります。この能力は、彼女が周囲の人々との絆を深め、彼らの心の声を理解するための鍵となっています。モモの周りには、いつもたくさんの友達が集まり、彼らはモモと一緒に過ごす時間を心から楽しみます。彼女の存在は、周囲に温かさと安らぎをもたらし、友人たちとの会話や遊びを通じ、彼らは本当の意味での「時間」を感じることができます。モモは、子供たちにとっての良き友達であり、彼女の無邪気な笑顔や、友達との楽しいひとときは、まさに時間の大切さを実感させる瞬間です。しかし、そんな彼女の世界を、「灰色の男たち」によって脅かされます。彼らは「時間泥棒」として知られ、大人たちから大切な時間を奪っていくのです。この「時間泥棒」である「灰色の男たち」に対して、モモの純真さが、どのようにして立ち向かうのか、その過程は非常に興味深く、そこは読んでからのお楽しみ、ということにしましょう。
ただ、物語のこの一部分を読んでみてください。
“時間をケチケチすることで、ほんとうはぜんぜんべつのなにかをケチケチしているということには、だれひとり気がついていないようでした。
自分たちの生活が日ごとに貧しくなり、日ごとに画一的になり、日ごとに冷たくなっていることを、だれひとり認めようとはしませんでした。
でも、それをはっきり感じはじめていたのは子どもたちでした。というのは、子どもにかまってくれる時間のある大人が、もう一人もいなくなってしまったからです。
けれど時間とは、生きるということ、そのものなのです。そして人のいのちは心を住み処としているのです。
人間が時間を節約すればするほど、生活はやせほそっていくのです。“
「モモ」岩波少年文庫 ミヒャエル・エンデ(著)/大島かおり(訳)
現代社会において、多忙な日常に追われ、時間に縛られた生活を送っている人は少なくないのではないでしょうか。かくいう私もその一人だと思っています。
ミヒャエル・エンデは、そのような社会の中で、本当に大切なものは何かを問いかけ、時間を「使う」のではなく、「大切にする」ことの重要性を訴えているのだと思います。
小説や物語を読んで何を感じるかは人それぞれ自由です。私にとってこの作品は、私たちにとっての「時間」とは何か、そしてその「時間」をどのように過ごすべきかを考えさせられた物語でした。この物語は、忙しい日常の中にありながら、モモのように大切な瞬間を見逃さず、心豊かに生きることを思い出させてくれるのです。私たちが日々の生活の中で、時間に追われている時、モモの存在は静かな警鐘となり、私に本当の意味での「生きる」ということを再認識させてくれます。
もし機会があれば、児童文学と馬鹿にせず、読んでみてください。
あなたの心の中には、この物語がどのように映るでしょう?
お問い合わせ
ご依頼及び業務内容へのご質問などお気軽にお問い合わせください