「何を始める時に、できないことを上げつらったり、今まではどうだったかを問うのはやめましょう。何ができるのか、これまで一度もなされなかったことは何かを問いましょう。」

アンゲラ・メルケル(ドイツ)元首相は、1973年にドレスデン工科大学に入学し、物理学を専攻、1986年に博士号を取得すると、大学卒業後はドレスデンの中央研究所で研究者として働きました。

1989年、ベルリンの壁が崩壊した後から、メルケルは政治活動に参加するようになり、ドイツ民主共和国(東ドイツ)の「民主運動」に関与して、特に「民主的改革」を求める市民運動に参加しました。1990年、ドイツ統一の際には、メルケルはキリスト教民主同盟(CDU)に参加し、同年のドイツ連邦議会選挙で当選。これにより、彼女は政治家としてのキャリアを本格的にスタートさせました。その後、連邦議会で主要な役割を果たしたメルケルは、2005年から2021年までドイツの首相を務め、ドイツ史上初の女性首相となりました。
メルケルの政権下では、ユーロ危機、難民問題、気候変動対策など、さまざまな課題に取り組み、また、冷静で理性的なリーダーシップスタイルで知られるようになり、国際的な舞台でも高い評価を受けました。2021年の選挙後、メルケルは首相を辞任し、新たな政権にバトンを渡しましたが、メルケルの政策や影響は今でもドイツや欧州において重要な存在であり続けています。

表題の言葉は、2019年、メルケルがアメリカ・ハーバード大学の卒業式で祝辞を述べた際の一節です。

「何を始める時に、できないことを上げつらったり、今まではどうだったかを問うのはやめましょう。何ができるのか、これまで一度もなされなかったことは何かを問いましょう。」

これは、ドイツ連邦共和国の新首相として、当内閣初の女性として、2005年、私がドイツ連邦議会で初めての所信表明演説として表明した言葉の再現です。そしてまさにこの言葉を、お伝えしたいこととして、みなさまにお伝えしたいと思います。
これほどのことが実現可能なのか、これほどの力が自分たちにあるのかと、自分でもおどろくようなことを実現させましょう。
私の人生では、約30年前のベルリンの壁の崩壊が、開かれた地へ足を踏み出すきっかけを与えてくれました。私は研究者としてのキャリアを捨て、政治の世界へ足を踏み入れました。それは、みなさんのこれからの人生同様、胸がワクワクするような、魔法のようにすばらしい時でした。当然のことながら、疑念や不安もありました。私たちはみんな、過去は知っていても、未来にあるものは知るよしもありません。みなさんも今日、卒業式の大きな喜びのただ中にあっても、そんなわずかな不安を感じていらっしゃるかもしれません。
広大な地に一歩を踏み出す瞬間は、同時にリスクを背負う時でもあります。古いものを手放すことは、新たな始まりの一部です。終わりのない始まりはありません。夜が訪れない昼、死のない生もまた存在しません。私たちの人生はすべてこの変化、つまり始まりと終わりの間からできています。この間(はざま)に存在するものを、私たちは人生や経験と呼ぶのです。
始動の魔法を感じ、チャンスを活かし切るため、私たちは時に、何かを終らせることを意識していなければなりません。これは、私が学生として、科学者として得た経験であり、政界で得た経験でもあります。私の政治家としての人生をまっとうした後に続くものは何でしょうか。知るよしはありません。広大な地が広がっています。しかし、これだけは確かです。これもまた、今までとはまったく異なる、新たなものになるでしょう。

メルケルは、未来に対する希望を持ち、積極的に行動することが重要だと語っています。
変化を恐れず、前向きな姿勢で取り組むことを、このメルケルの言葉から学びたいと思います。

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