【第1回】障害年金とは?

「働いていても受給できる」って本当?
仕組みと金額を社労士が徹底解説

「病気で以前のように仕事ができない。」

「通院費や生活費の負担が増え、将来が見えない。」

「障害者手帳は持っていないけれど、生活が苦しい。」

もし、あなたやご家族がこのような悩みをお持ちなら、「障害年金」という制度が生活を支える命綱になるかもしれません。


皆様、こんにちは。

Geborgenheit(ゲボーゲンハイト)社会保険労務士事務所の社会保険労務士・梅津 昌典です。

全8回にわたり、知っているようで知らない「障害年金」について、専門家の視点から分かりやすく解説していきたいと思います。

インターネット上には難しい法律用語が並んでいて、「結局、自分は対象なの?」という疑問が解消されないことも多いのではないでしょうか。

この記事では、教科書的な説明だけでなく、

「実際の現場ではどう審査されるのか」

「認定されるためのポイントは何か」

という、実務に即した生きた情報をお届けします。

第1回目は、制度の全体像と、「いくら受け取れるのか」「働いていても大丈夫か」といった、最も気になる基礎知識について解説します。


目次


1⃣ 障害年金は「特別な人」だけの制度ではありません

「障害年金」という名前から、どのようなイメージを持たれますか?

「生まれつき重い障害がある人のためのもの」

「車椅子生活など、身体的な障害がないともらえない」

と思われている方が非常に多いのが現状ではないでしょうか。

しかし、これは大きな誤解です。

障害年金は、「病気やケガによって、生活や仕事に支障が出たとき」に支給される、国が運営する公的な保険制度です。

■ 誰のための制度?

原則として20歳から65歳までの現役世代が対象です。

老後に受け取る「老齢年金」、一家の働き手が亡くなった時の「遺族年金」と並び、公的年金制度の3本柱の一つです。

つまり、皆様が毎月給与から引かれている年金保険料は、将来のためだけでなく、「万が一の際の、今の生活を守るための保険料」でもあるのです。

■ 「恩恵」ではなく「権利」です

ここが最も大切なポイントですが、障害年金は国からの「お恵み(恩恵)」ではありません。

民間の生命保険で入院給付金を受け取るのと同様に、要件を満たした人が正当に受け取ることができる「権利」なのです。

「申し訳ない」と遠慮する必要は全くありません。

2⃣「障害者手帳」と「障害年金」は全く別の制度です

日々の相談業務の中で、最も頻繁に耳にするのがこの言葉です。

「私、障害者手帳を持っていないので、年金は請求できませんよね?」

結論から申し上げますと、障害者手帳を持っていなくても、障害年金は受給できます。

なぜなら、この2つは、運営元も目的も認定基準も異なる「完全に別の制度」だからです。

障害者手帳障害年金
運営地方自治体国(日本年金機構)
メリット税金の控除、公共交通機関の割引、障害者雇用枠での就労など「サービス」の利用が中心偶数月に「現金」が振り込まれる(所得保障)
審査自治体の基準で行われる。国の基準で行われる。

■ 等級もリンクしません

手帳の等級と年金の等級は必ずしも一致しません。

「手帳は3級だが、年金は2級(上位等級)が認定された」というケースもあれば、「手帳は2級だが、年金は不支給だった」というケースもあります。

「手帳がないから」という理由で申請を諦める必要もありません。

逆に言えば、手帳を持っているからといって自動的に年金が支給されるわけでもないため、別途、年金用の申請手続きが必要になります。

3⃣ いくら受け取れる?「初診日」で決まる運命の分かれ道

では、実際にいくら受け取れるのでしょうか。

障害年金の金額や種類は、「初診日(その病気で初めて医師の診察を受けた日)」に、どの年金制度に加入していたかによって大きく2つに分かれます。

ここが非常に重要です。

ご自身がどちらに当てはまるかをご確認ください。

① 障害基礎年金(1階部分)

初診日に「国民年金」に加入していた人が対象です。(例:自営業、フリーランス、学生、主婦(第3号被保険者)、無職の方など)

また、20歳前に初診日がある方もここに含まれます。

・1級:年間 約104万円 + 子の加算

・2級:年間 約83万円 + 子の加算 (※金額は令和7年度時点の目安です。物価スライド等で毎年4月に改定されます)

【注意点】

障害基礎年金には「3級」がありません。

つまり、障害の状態が1級や2級(日常生活に著しい制限がある状態)に該当しない場合、支給額はゼロになります。

② 障害厚生年金(2階部分)

初診日に「厚生年金」に加入していた人が対象です。(例:会社員、公務員など)

・1級:基礎年金1級 + 報酬比例の年金額 × 1.25 + 配偶者の加算

・2級:基礎年金2級 + 報酬比例の年金額 + 配偶者の加算

・3級:報酬比例の年金額(最低保証額 約59万円)

【大きなメリット】

厚生年金の場合、基礎年金に上乗せがあるため金額が手厚くなります。

さらに決定的な違いは、「3級」があることです。

1級・2級ほど重くはないけれど、仕事や生活に制限がある場合(3級)でも、最低でも年間約59万円が保証されます。

さらに軽度の場合は、一時金である「障害手当金」が出る場合もあります。

「初診日に会社員だったかどうか」は、これほどまでに受給額とハードルに大きな差を生むのです。

4⃣ よくある誤解:「働いていると受給できない」は本当か?

「なんとか会社に行って働いているのですが、障害年金は無理ですよね?」

これも非常に多いご質問ですが、諦めるのは早計です。

結論は、「働いていても受給できる可能性は十分にあります」

ただし、傷病の種類によって審査の傾向が異なります。

人工透析・ペースメーカー・人工関節など

就労状況にかかわらず、検査数値や装着の事実をもって等級が認定されることがほとんどです。
フルタイムで働いていても受給可能です。

がん・難病などの内部疾患

働いていても、体調により欠勤が多い、残業ができない、軽作業しかできないといった「就労の制限」があれば評価されます。

うつ病・統合失調症などの精神疾患

ここが一番繊細な判断を要します。

精神疾患の審査では「働けている=日常生活能力がある」と見なされやすく、不支給のリスクが高まるのは事実です。

しかし、「会社で特別な配慮を受けている(個室勤務、短時間、単純作業への配置転換など)」場合や、「仕事以外は寝たきりで家事もできない」といった実態があれば、就労していても2級や3級に認定されるケースは多々あります。

「働いているから無理だ」と自己判断せず、ぜひ一度専門家にご相談ください。

5⃣ 障害年金を受給するメリットとデメリット

申請を検討する上で、メリットとデメリットを整理しておきましょう。

■ メリット:生活と治療の基盤ができる

1・経済的な安定

働けない、あるいは働き方をセーブせざるを得ない中で、2か月に1回、現金が振り込まれることは心の安定に直結します。
「無理をして働かなくても良い」という安心感が、治療効果を高めることもあります。

2・非課税所得である

障害年金には税金(所得税・住民税)がかかりません。

3・使い道は自由

医療費だけでなく、生活費、家賃、子供の教育費、趣味など、何に使っても自由です。

■ デメリット:実はほとんどありません

よく心配される点について、Q&A形式で回答します。

会社にバレますか?

バレません。
年金事務所から会社へ「この人は受給者です」という通知が行くことはありません。
また、非課税なので住民税の決定通知書等で知られることもありません。 (※ただし、会社の年末調整で「障害者控除」を受ける場合や、同じ病気で「傷病手当金」を受給し調整が必要な場合は、会社に知られる可能性があります。)

将来の老齢年金が減りますか?

減りません。
障害年金を受給していた期間も、老齢年金の受給資格期間としてカウントされます。
65歳になったとき、障害年金と老齢年金のどちらか有利な方(多くもらえる方)を選ぶことができます。

唯一のデメリットといえば、「申請手続きが非常に複雑で、手間と時間がかかること」です。
これを乗り越えるために、私たち社会保険労務士がいます。

6⃣ うつ病・がん・糖尿病…実は幅広い対象疾患

最後に、どのような病気が対象になるのかを見てみましょう。

「目が見えない」

「手足が動かない」

といった外部障害だけでなく、多くの病気が対象です。

精神の障害

うつ病、双極性障害(躁うつ病)、統合失調症、てんかん、発達障害、知的障害など

外部の障害

眼、聴覚、肢体の障害(脳卒中の後遺症を含む)など

内部の障害

がん、心疾患(ペースメーカー等)、呼吸器疾患(在宅酸素等)、腎疾患(人工透析)、肝疾患、糖尿病、HIVなど

「私の病気は対象外だ」と思い込んでいた方が、実は受給対象だったというケースは後を絶ちません。

日常生活や就労に支障があれば、まずは「対象かもしれない」と疑ってみてください。

7⃣ まとめ:まずは「権利があるかもしれない」と知ることから

第1回目は、障害年金の全体像について解説しました。

  • 障害者手帳がなくても申請できる。
  • 初診日に「国民年金」か「厚生年金」かで、金額と等級が変わる。
  • 働きながら受給している人もたくさんいる。
  • 受給のデメリットはほぼなく、経済的な安定が得られる。

「生活が苦しいけれど、貯金を切り崩すしかない。」

そう諦める前に、障害年金という選択肢を検討してみてください。

それはあなたがこれまで保険料を納めてきた、正当な権利なのですから。