【第2回】障害年金をもらうための「3つの大きな壁」を完全解説!

初診日・納付・認定日とは?

「障害年金をもらいたいけれど、自分は対象なのだろうか?」

そう思ったとき、多くの方はまず「自分の病気の重さ(等級)」を気にされます。

「うつ病で仕事ができないから2級かな?」

「透析をしているから2級かな?」

と。

もちろん「障害の状態」は重要ですが、実はそれ以前に、絶対にクリアしなければならない「3つの条件」があることをご存じでしょうか?

たとえ寝たきりの状態であっても、この3つの条件のうち1つでも欠けていれば、残念ながら障害年金は1円も受給できません。

これを私たちは「障害年金の3つの壁(受給要件)」と呼んでいます。

第2回目は、申請前に必ず確認しておきたい、この「3つの壁」について、社会保険労務士が分かりやすく解説します。

ここさえクリアできれば、受給への道は大きく開けます。


目次


1⃣ 審査の土俵に上がるための「3つの壁」とは

障害年金を受給するためには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。

これらは「どれか1つ」ではなく「全部」が必要なのです。

初診日要件(スタートライン)

その病気やケガで、初めて医師の診療を受けた日はいつか
その日に年金制度に加入していたか

保険料納付要件(参加チケット)

初診日の前日時点で、年金保険料をきちんと納めていたか?(未納がないか。)

障害認定日要件(ゴール・判定日)

障害の状態が定まった日(通常は初診日から1年6か月後)に、障害等級に該当する状態にあるか?

これらが揃って初めて、年金機構による審査(土俵)に上がることができます。

一つずつ詳しく見ていきましょう。

2⃣【第1の壁】初診日要件:「いつ」初めて病院に行きましたか?

障害年金の手続きにおいて、最も重要で、かつ最もトラブルになりやすいのがこの「初診日」です。

すべての判断の基準点となるものです。

■ 初診日とは?

「障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日」のことです。
「病名が確定した日」や「入院した日」、「障害者手帳をもらった日」ではありません。

【よくある勘違いの例】

Aさん(うつ病)の場合
2020年4月: 仕事が辛く、不眠や頭痛がするため近所の内科を受診。「風邪気味ですね」と言われ薬をもらう。

2020年8月: 症状が悪化し、心療内科を受診。「うつ病」と診断される。

Aさんの初診日は?
答えは「2020年4月(内科を受診した日)」になる可能性が高いです。
たとえ当時の診断名が風邪であっても、その後の精神疾患と症状の因果関係が認められれば、最初の内科受診日が初診日となります。

■ なぜ初診日がそんなに重要なの?

前回(第1回)の記事で、「国民年金か厚生年金かで、もらえる金額が違う」というお話をしました。

その「国民年金か厚生年金か」を決めるのが、まさにこの初診日だからです。

初診日に会社員だった → 障害厚生年金(手厚い・3級まである)
初診日に退職していた → 障害基礎年金(1・2級のみ)

たった1日の違いで、受給額が数百万円変わったり、あるいは「3級相当なのに基礎年金だからもらえない」という事態になったりします。
だからこそ、初診日の特定は極めて慎重に行う必要があるのです。

3⃣【第2の壁】保険料納付要件:未納があると申請できない?「後出し」は無効!

次に立ちはだかるのが「保険料」の問題です。

障害年金はあくまで「保険」ですので、保険料を払っていない人には原則支給されません。

しかし、完璧に払い続けている必要はありません。

■ 判定のタイミングは「初診日の前日」

非常に重要なルールがあります。
納付要件は、「初診日の前日」時点で判定されます。
つまり、病気になって病院に行ってから、「大変だ、年金をもらうために未納分を急いで払おう!」と慌てて納付しても、それは「後出し」とみなされ、納付要件の計算には原則入れてもらえません。

■ 2つの基準(原則と特例)

以下のどちらか一方を満たしていればOKです。

① 原則(3分の2要件)
20歳から初診日の前々月までの加入期間のうち、「保険料を納めた期間 + 免除された期間」が3分の2以上あること(逆に言えば、未納期間が3分の1未満であればOKです。)
② 特例(直近1年要件)
初診日に65歳未満で、初診日の前々月までの直近1年間に未納期間がないこと。(過去に長い未納期間があっても、直近1年間しっかり手続きしていればクリアできる救済措置です。)

■ 「免除」も納付期間としてカウントされる!

経済的に苦しくて「全額免除」や「若年者納付猶予」「学生納付特例」の手続きをしていた期間は、未納ではなく「納付済み期間」として扱われます。
一番もったいないのは、「お金がないから」と手続きをせずに放置(未納)してしまうことです。
未納のまま放置していると、いざという時に障害年金を受け取れません。

4⃣【第3の壁】障害認定日要件:申請できるのは「1年6ヶ月後」が基本

初診日が決まり、保険料もOKだった場合、次は「いつから請求できるか」という時期の問題です。

原則として、障害年金は初診日から1年6か月経過した日(=障害認定日)にならないと請求できません。

■ なぜ1年6か月も待つの?

病気やケガをしてすぐは、治療によって回復する可能性があります。
しばらく治療を続けても治らず、「症状が固定してしまった(障害が残った)」と判断できる時期として、1年6か月という期間が設定されています。
この「障害認定日」の時点で、国が定める障害等級(1級・2級・3級など)の状態に該当していれば、年金が支給されます。

■ 待たなくても良い「特例」がある

ただし、1年6か月経つ前に症状が固定したとみなされる場合は、その時点で請求(特例認定)が可能です。

主な例は以下のとおりです
・人工透析を開始した日(から3か月経過後)
・人工関節・人工骨頭を挿入置換した日
・心臓ペースメーカー、ICDを埋め込んだ日
・手足の切断をした日
・脳血管疾患で6か月経過し症状固定と診断された日 など

精神疾患や内部疾患の多くは1年6か月待つ必要がありますが、上記のようなケースではすぐに申請準備に入ることができます。
「まだ1年半経っていないから」と待っていると、もらえるはずの年金をもらい損ねてしまう可能性があります。

5⃣ よくあるトラブル:「初診日の病院がなくなった!」

この3つの壁の中で、実務上もっとも苦労するのが「初診日の証明」です。

障害年金の申請には、初診日の病院で「受診状況等証明書」という書類を書いてもらう必要があります。

しかし、初診日が10年前、20年前というケースも珍しくありません。
・「病院が廃院になっていてカルテがない」
・「5年以上前なのでカルテが破棄されていた」
・「先生が代わっていて当時のことを誰も知らない」

こうなると、「初診日を証明できない=受給要件を満たせない」となり、申請そのものができなくなってしまう危機に陥ります。

しかし、諦めないでください。

カルテがなくても、診察券、お薬手帳、生命保険の給付記録、第三者の証言など、さまざまな資料を積み重ねて初診日を証明する方法はあります。

ここは私たち社会保険労務士の腕の見せ所でもあります。 (※初診日が見つからない場合の対処法については、第4回の記事で詳しく特集します。)

6⃣ まとめ:自分の「初診日」を特定することから始めよう

第2回目は、障害年金をもらうための3つの大きな条件について解説しました。

初診日: 初めて医師にかかった日を特定する(病院のレシート等は捨てない!)。

保険料納付: 初診日の前日までに保険料を払っているか?(免除でもOK)

認定日: 原則1年6か月経過後に審査される(特例あり)。

どんなに今の症状が重くても、このルールを無視することはできません。

特に「初診日」は、ご自身の記憶があいまいだと、間違った日付で申告してしまい「納付要件を満たさない」と判断されるリスクもあります。

「私の初診日はいつになるんだろう?」

「学生時代に年金を払っていなかった気がするけど、大丈夫かな?」

そんな不安がある方は、申請前に必ず専門家にご相談ください。

自己判断で申請して一度不支給になると、その決定を覆すのは非常に困難であるのが現実ですから。