【第3回】うつ病・がん・透析も対象?

意外と知られていない障害年金の「対象疾患」完全リスト

「足が不自由なわけではないし、見た目は元気そうだから無理ですよね?」

「働いているけれど、透析に通うのが本当に大変で…。」

「長年のうつ病で、入退院を繰り返している。」

障害年金の相談を受けていると、「自分の病気は障害年金の対象外だ」と思い込んでいる方が非常に多いことに驚かされます。

結論から申し上げますと、障害年金の対象となる病気やケガに、原則として制限はありません
風邪や単なる加齢によるものなどを除き、ほとんどすべての病気が対象になり得ます。

第3回目は、意外と知られていない「対象疾患」の範囲と、それぞれの病気で「どこが審査されるのか(認定のポイント)」について、社会保険労務士が詳しく解説します。


目次


1⃣ 誤解だらけの「障害」のイメージ

「障害」という言葉を聞くと、車椅子を使っている方や、白杖を持っている方など、身体的なハンディキャップをイメージされる方が多いかもしれません。

しかし、障害年金法における「障害」の定義はもっと広範囲です。

「長期にわたって安静を必要とする病気」や「精神的な不調により日常生活がままならない状態」も、立派な障害として認定され得ます。

実際に、新たに障害年金を受給し始める人の内訳を見ると、近年最も多いのは「精神の障害」であり、全体の6割以上を占めています。

次いで「内部障害(心臓、腎臓など)」、「知的障害」、「脳血管疾患」と続きます。

「見た目には分からない障害」で苦しんでいる方にこそ、この制度を知っていただきたいと思っています。

2⃣【精神の障害】うつ病・統合失調症・発達障害など

現在、受給者の割合として最も増えているのがこのカテゴリーです。

「心の病」も、要件を満たせば受給対象となります

■ 主な対象疾患

  • 気分障害: うつ病、双極性障害(躁うつ病)
  • 精神病: 統合失調症
  • 発達障害: ADHD(注意欠如・多動性障害)、ASD(自閉スペクトラム症)、学習障害
  • その他: 知的障害、てんかん、高次脳機能障害(事故や脳卒中による記憶障害など)

■ 認定のポイント

精神疾患の場合、血液検査やレントゲンのような明確な数値が出ません。
そのため、「日常生活能力」と「労働能力」がどれくらい低下しているかが審査のカギとなります。

  • 食事や入浴を自分から進んでできるか?(衛生面の保持)
  • 通院や服薬管理は一人でできるか?
  • 人とのコミュニケーションは円滑か?
  • 予期せぬ事態にパニックにならず対応できるか?

例えば、「一人暮らしができているから対象外」ということはありません。
一人暮らしでも、家族の頻繁な援助が必要だったり、部屋の衛生状態が悪化していたり、食事がカップ麺ばかりになっていたりする場合、それは「能力が低下している」と評価されます。

【大人の発達障害について】

近年、「大人になってから発達障害と診断された」という相談が急増しています。
発達障害は生まれつきのものですが、障害年金では「初めて医師の診察を受けた日」が初診日となります。
大人になって初めて受診した場合でも、もちろん申請可能です。

3⃣【内部の障害】がん・心臓病・糖尿病・腎臓病など

身体の内部にある臓器の病気も対象です。

これらは「働いていると受給できない」と思われがちですが、疾患によっては就労しながら受給している方も多数いらっしゃいます。

① がん(悪性新生物)

末期がんだけが対象ではありません。
抗がん剤治療の副作用(激しい倦怠感、吐き気、貧血など)で動けない状態や、手術後の後遺症(人工肛門、喉頭全摘出による発声障害、手足のリンパ浮腫など)も評価対象です。
「がんと診断されただけ」では受給できませんが、「治療による衰弱で仕事や生活に制限がある」場合は対象となります。

② 腎疾患・肝疾患・糖尿病

  • 人工透析: 透析を開始した場合、原則として2級に認定されます。働いていても受給可能です。
  • 糖尿病: 血糖値が高いだけでは難しいですが、合併症(壊疽による切断、失明、透析など)がある場合や、インスリン治療を行ってもコントロール不良な重症例は対象となります。

③ 心疾患(心臓病)

  • ペースメーカー・ICD: 装着した場合、原則として3級に認定されます。(※3級は障害厚生年金の対象者のみ)
  • 人工弁: 置換術を行った場合も3級の対象です。

内部障害の特徴は、「検査数値」が重視される点です。

医師の診断書にある検査結果が国の基準値に該当しているかどうかが、等級判定の大きな分かれ目となります。

4⃣【外部の障害】眼・耳・手足の障害

従来からのイメージ通り、外部障害ももちろん対象です。

  • 眼の障害: 白内障、緑内障、網膜色素変性症などによる視力低下、視野狭窄
  • 聴覚の障害: 感音性難聴などによる聴力低下
  • 肢体の障害: 脳梗塞・脳出血による麻痺、関節リウマチ、人工関節の置換、事故による切断など

■ 肢体障害のポイント

「手足が全く動かない」レベルでないとダメだと思っていませんか?

例えば、「人工関節を入れた」場合は原則3級(厚生年金)、「杖を使わないと歩行が困難」であれば2級相当など、補助具が必要なレベルでも認定される可能性があります。

5⃣「対象外」になりやすい病気もある?(神経症・人格障害)

「どんな病気でも対象」と申し上げましたが、精神の障害において少し注意が必要な例外があります。

それが「神経症(パニック障害、適応障害、不安障害など)」や「人格障害(パーソナリティ障害)」です。

これらは、原則として障害年金の認定対象とはなりません。

■ なぜ対象外なのか?

 国の基準では、「精神病」と「神経症」を区別しており、神経症は「環境を変えることや、本人の意思で改善の余地がある」と(制度上は)捉えられているためです。

■ 【重要】諦めるのはまだ早い!

ただし、診断名が「適応障害」や「パニック障害」であっても、実態として「うつ病」の症状を併発している場合や、「精神病に近い重篤な状態」であると医師が認めた場合は、対象となることがあります。
診断書に「適応障害」としか書かれていないと審査で落とされる可能性が高いですが、備考欄に「うつ状態を併発しており、臨床像はうつ病に準ずる」といった記載があれば、審査の土俵に乗ることが可能です。

ここが社会保険労務士の腕の見せ所でもあります。

6⃣ 重要:病名よりも「日常生活がどれだけ送れないか」

ここまで病名を見てきましたが、障害年金において最も大切なことをお伝えします。

それは、「この病名だから、自動的に〇級もらえる。」という決まり(一部例外を除く。)はないということです。

同じ「うつ病」でも、以下の2人では結果が異なります。

  • Aさん: 薬を飲みながら会社に行き、フルタイムで働いている。
  • Bさん: 一日中布団から出られず、食事も家族に運んでもらっている。

この場合、Bさんは受給できる可能性が高いですが、Aさんは「日常生活能力・労働能力がある」とみなされ、受給は難しいでしょう。

障害年金は、「その病気のせいで、生活や仕事にどれだけ支障が出ているか」を審査する制度です

したがって、申請の際には、単に診断書を出すだけでなく、

「いかに今の生活が大変か」

「いかに働けない状態か」

を具体的に伝える「病歴・就労状況等申立書」の作成が極めて重要になります。(※この書類の書き方については、第6回で詳しく解説します。)

7⃣ まとめ:諦める前に専門家に確認を

第3回目は、障害年金の対象となる疾患について解説しました。

  • 精神疾患(うつ病や発達障害)も対象
  • がんや内部疾患も、生活への影響度で決まる。
  • 透析やペースメーカーは働いていても対象になることが多い。
  • 神経症でも、病状や診断書の書き方によっては対象になる可能性がある。

「私の病気は対象外かも」

「先生に症状が軽いと言われたから無理かも」

そう自己判断して申請を諦めてしまうのが、一番もったいないことです。

もし、今の病気で生活に困り事があるのなら、まずは社会保険労務士にご相談ください。

「あなたの症状なら、十分に受給の可能性がありますよ。」というケースは、実はたくさんあるのですから。